私が獣医師になって今に至るまで常に心掛けている言葉です。
お腹が痛くて元気がない、歯が痛くて御飯が食べられない、腰が痛くて立てない、人間なら数秒でわかってもらえる意思伝達をどこまで感じてあげられるのだろう…獣医療で一番難しいことだと常々感じます。
昔話にはなりますが、ある時入院していて元気がなく食べずに寝てばかりしていた動物が、飼い主様がお見舞いに来た途端、安心したような表情で手から少しずつ御飯を食べている姿を見たことがとても印象に残っています。
動物が獣医師に見せる姿と飼い主様に見せる姿は全く違うものです、そしてちょっとした表情の変化にまず気付いて病院に連れてきてくれるのは他ならぬ飼い主様です。
飼い主様とのコミュニケーションを大切にし、わかりやすい言葉で納得いくまで話し合い、共に考え、時には苦しみを分け合い、最後は皆で笑顔になれることで本当の信頼関係が築いていけるものだと思います。
今は人生100年といわれる時代になり様々な出会いや別れがあります。しかし動物達にとって出会いはあれど、最期は自らが去っていくものです。そんな短い生命だからこと言葉にはできない大切なものを我々にたくさん教えてくれます。
できるだけ長く健康な時間を一緒に過ごしてあげたい、その想いのためにどんな些細なことでも親身に相談にのってくれる、"医者"であると同時に心まで癒してあげることができる"癒者"である、そんな獣医師でありたいと思います。